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俺の母親がつらくて悲しむのは、俺が亡くなったからだと考えたのだ。
「しばらく休み」はどこにいったんだ?
死者がまた学校に登校してくるのか?
それから三日間、佳奈は喪に服した。
どこでそれを学んだのかは知らないが、真っ黒の服を着て黒い手袋をはめ黒い帽子をかぶり、しかもそこにベールっぽい黒い布をセロテープで貼りつけていた。
しかも真夏のことだ。
佳奈の両親もそんな娘をそのまま学校に送り出すなんてどうかしている。
友人の祖母の死を悼む娘に共感したのか?
家族そろってどれだけ思いこみが激しいのか。
そのことを俺が知っている理由は簡単だ。
二日休んで学校に行ったら、その格好の佳奈が教室の自席に座っていたからだ。
周りの友人たちは慣れたもので、遠巻きにしながら笑っていた。
驚いた俺はすぐに佳奈に声をかけた。
そのときの佳奈を忘れることができない。
佳奈はあごがはずれるのではないかと心配するくらいに大きな口を開けて驚いた。
でもそのあとすぐに、その驚きを隠して周囲をうかがった。
うかがいながらも俺をときどき見ていた。
椅子に座りなおしてから視線をそらしたまま小声でつぶやいたのだ。
「祐ちゃん、ありがと。会いに来てくれて。わかってる。みんなには内緒にするから、心配しないで」
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