第一章 祐一郎

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冷静に考えてみれば、俺が彼と並べるような容姿を持ちあわせていないことくらいわかる。 彼がだめなのに俺がうまくいくなんて、そんな甘い予測は持つことができなかった。 だから、うまくいかないならいまのままでいいじゃないかと考え直したのだ。 それからも告白したい衝動は何度も訪れた。 映画を見て涙ぐむ佳奈の手を握りしめたいと思ったとき、海ではしゃぐビキニ姿の佳奈に見とれたとき、俺が仕事でくさっていると叱りつけてくれたときに。 佳奈はいつも会いたいときには会える距離にいてくれた。 楽しいときには一緒に笑ってくれた。 悲しいときには俺より先に泣いてくれた。 辛いときにはそのことに怒りながらも俺をはげましてくれた。 佳奈の前では俺は俺のままでいることができる。 だからそれだけは失いたくなかった。 佳奈の前では素直な気持ちでいられるはずなのに、佳奈への気持ちにだけは素直に行動を起こすことができなかった。 それは、会えるだけでいいと思ったからだ。 そう思えるくらいに佳奈は大切すぎる存在になっていた。 それで結局、一度も自分の気持ちを佳奈に伝えたことはない。 佳奈との恋愛はあきらめて、ほかの誰かとの恋愛を探しもした。 友達の紹介でデートをしたり、つきあったりもしてみた。     
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