第一章 祐一郎

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でも、デートをしても、キスをしても、エッチをしても、佳奈の顔が浮かんでくるのだ。 だから、初めてのことであってもそれほどの喜びもない。 しかもそんな気持ちを抱いていることは、なんとなくばれてしまう。 つきあっている彼女に対して、これほど失礼なことはない。 佳奈の代わりを求めているみたいではないか。 しかも、あの罪悪感はなんだろう。 誰かとつきあっているあいだずっと、罪悪感にさいなまれる。 誰かと付き合っていることを、佳奈にだけは伝えることができない。 ばれないように努力までする。 彼女を部屋に呼ぶときには掃除もしないのに、佳奈を部屋に呼ぶときだけは徹底的に掃除をする。 佳奈はときどき、天気の話と同じくらいの感覚で、彼女はできたかと聞いてくる。 しかも彼女がいるときにこそ聞いてくる。 だからあせってしまう。 佳奈に嘘はつけないから、聞こえなかったふりをしたりごまかしたりしてしまう。 佳奈に隠れて浮気をしているかのようにすら感じていた。 佳奈とは一度もつきあったことがないのに。 あの罪悪感はどこからくるのか? 佳奈に対する罪悪感というよりも、自分の気持ちをいつわる自分に対する罪悪感なのだろうか?     
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