第一章 祐一郎

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おいしいそばをいただいたから部屋に行ってもいいか、と唐突に連絡してきたのだ。 もちろん大歓迎だ。 佳奈が俺のアパートに来るのははじめてではないので、お互い仕事を終えたら部屋で待ちあわせることにした。 その日はもう仕事が手につかない。 久しぶりに佳奈に会えることで浮かれていた。 その笑顔がよかったのか、いつもよりも契約が取れた。 仕事の途中で酒屋に寄り、給料日前なのに奮発して有名な日本酒を買っておいた。 普段はあまり飲まない日本酒だけれど、佳奈はそれが好きだし、ふたりとも明日は休みなのでゆっくり飲めるだろう。 そのあと上司に今日の成果を報告してから、適当な言い訳をして早めに帰宅した。 大急ぎで見られたくないものを片づけ、時間のある限り掃除をした。そこでチャイムが鳴った。 佳奈が笑顔とともに訪れた。 少しやせたかもしれない。 過労やストレスではないかと心配になる。 でも佳奈は、扉を開けた瞬間から元気にしゃべり続けた。     
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