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昨夜遅くに戻ってきたので、朝の早い時間に近くの公園で会う約束をした。
約束の時間よりも早いのに祐ちゃんは公園の入り口で待っていた。
少しやせたのか、背がさらに高くなったかのように見えた。
朝日に照らされる祐ちゃんの顔が輝いていた。
私は「おはよう」といったあと、言葉を継げなくなった。
ただ祐ちゃんに会うことができて嬉しかったからだ。
このあとでどんなに哀しい話があったとしても、私は笑って受け止めることを決心していた。
心の中で祐ちゃんに「ありがとう」といって祐ちゃんの笑顔を見つめた。
「佳奈、結婚式を挙げよう」
話が見えない。
誰と誰の結婚式なのだろうか、と私は思った。
そのあとの祐ちゃんの話を聞く限り、どうやら祐ちゃんと私の結婚式の話をしているようだった。
今回の大阪出張のおかげで結婚資金をつくったという。
出張手当や残業代のほかにも宿泊費までためこんでいた。
最初は安いカプセルホテルで少し宿泊費を浮かせていて、その後は親しくなった先輩の家を泊まり歩いて宿泊代はまるまる稼いだらしい。
その理由を会社の人たちにも伝えたものだから、みんなが協力してくれたという。
私はなにもいえなかった。
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