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「あ、また傘がない」
あの日と同じようにバス停に急ぐ。
結局あの日、キスをされてから恥ずかしくなってしまって、そのまま家に帰ったんだ。
で、それから彼には会ってない。
あれは彼の遊び文句だったのかもしれない。
でも、あたしをドキドキさせるには十分な言葉だった。
だからあたしも彼を受け入れた。
「……あ」
バス停につくとイヤホンを耳に指して座っている彼がいた。
「あれ、またずぶ濡れじゃん」
ふわってまた笑う。
あたしはこの笑顔を見ると彼に引っ張られてるような気分になるんだ。
これが好きってことなのかもしれない。
「タオル、使いなよ」
またこの前と同じタオルを渡される。
「あれ、そういえば部活……」
「あの部活の部長とサッカー部とかけもち」
〝部長やると有利〟だからと付け足した。
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