雨と先輩

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「この前逃げたね?」 怪しい笑みであたしを見る。 「あ……」 キスを思い出して顔が赤くなるのがわかる。 ……恥ずかしい。 「俺はキミのこともっと知りたいし、好きだなって思ってるんだけど」 〝好きだな〟 その言葉が妙にしっくりと胸に入ってくる。 「……あたしは、」 〝好きです〟 そう言えばいいのにうまく言葉にならない。 「……全然見込みないなら諦める努力するけど?」 〝諦める努力〟 そんな努力はして欲しくない。 「いや、です」 「ん?どっちのいや?」 ニヤっと笑いながらあたしの髪の毛に触れる。 「ちゃんと拭かないと」 あたしの髪の毛を優しくタオルで吹いてくれる。 「……好きです」 気がついたらそう口にしていた。 「やっと言った」 あたしの唇に彼の指が触れる。 この指さえもドキドキしてしまうあたしはなんなのだろう。 恋愛初心者だから仕方ないのかな。
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