雨と先輩

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「いいよ。いつか会えたらで」 バスに乗り込もうとした彼が少し振り向く。 「はい。いつか」 彼の連絡先を聞けばよかったのかもしれない。 でも、そんな勇気はあたしにはなかった。 少しの勇気でいいのに、あたしにはきくことができない。 「乾いたら綺麗な髪なんだろうね」 バスに乗り込むと彼に髪の毛を触られる。 「そんなことないですよ……」 ドキドキが止まらない。 この人いちいちやることがあたしを持っていこうとする。 なんだろう。 女たらしに見えるわけでもない。 でも、簡単にあたしの心を持っていこうとするんだ。 「学校でキミを見つけるの楽しみ」 なんてニコリと笑うからあたしはまた持っていかれそうになるんだ。 「会った時のためにタオル毎日持っていきますね」 また会いたいと願った。 約束をすればいいだけなのにお互いにそれをしなかった。 どうしてかはわからないけど、奇跡に賭けたかったのかもしれない。
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