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目が覚めると、見た事のない天井が映る。
「………どこだここ…」
確か…、確か水溜まりを踏んで歩いていたら、何の前触れもなく落ちて、それで……。
「調子はどうだい?」
「うおっ!?」
思考を巡らせている中、突然視界に現れた人物に驚き、思わず飛び起きてしまった。
「いって…」
鈍い音が響いた直後、俺は額を押え踞る。
いやどう考えても飛び起きたらそりゃ頭同士ぶつかるよな…。
「ッ………、強烈だな…。石頭か君は…」
声の聞こえた方に目を向けると、銀髪の男が俺と同じように額を押えていた。
「失礼だな…」
少し額をさすって、けろっとした表情で俺を見たその男に思わず、石頭はお前の方だろ、と言いそうになるが、俺が言いたいのはそんな事ではないし、言いたい事よりも聞きたい事の方が多い。
「…アンタ誰なんだ?どこなんだここは?俺はどうしてここに居るんだ?一体何が―」
「落ち着いてくれ」
急に顔が近付いた事に驚き口を閉じると、俺が黙った事を確認して男は離れた。
「ここは、私の家だ」
フフン、と自慢気に、目の前の男は笑みを浮かべる。
いやだから何だ、と言い返す間もなく、男は再び口を開いた。
「森の奥に泉があるのだが、その泉の畔で君が倒れていたから、介抱させてもらったよ」
何を言われているのか分からなかった。
森の奥?泉?倒れていた?
何言ってんだと言いかけて、水溜まりに落ちた事を思い出した。
水溜まりに落ちて、それから何かがあって俺は泉に辿り着いた、という事か?
「私が思うに、君はこの世界の人間ではないね」
そう言って、男は話し始めた。
この世界とどこか別の世界の時間が重なった瞬間に、こちらとどこかを繋ぐ扉に触れてしまったものが、稀に迷い込む事があるらしい。
そして今日、俺が現れた、と。
つまり俺は、俺が居た世界とは別の世界に来たという事になる。
どうして俺が?俺はどうなる?何でこうなった?俺は帰れるのか?
「ところで君」
人知れぬ不安感に襲われていると、ふいに両肩に手を置かれ、俺は顔を上げた。
「目の色が綺麗だね!」
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