雨の日の出来事

3/7
前へ
/7ページ
次へ
目が覚めると、見た事のない天井が映る。 「………どこだここ…」 確か…、確か水溜まりを踏んで歩いていたら、何の前触れもなく落ちて、それで……。 「調子はどうだい?」 「うおっ!?」 思考を巡らせている中、突然視界に現れた人物に驚き、思わず飛び起きてしまった。 「いって…」 鈍い音が響いた直後、俺は額を押え踞る。 いやどう考えても飛び起きたらそりゃ頭同士ぶつかるよな…。 「ッ………、強烈だな…。石頭か君は…」 声の聞こえた方に目を向けると、銀髪の男が俺と同じように額を押えていた。 「失礼だな…」 少し額をさすって、けろっとした表情で俺を見たその男に思わず、石頭はお前の方だろ、と言いそうになるが、俺が言いたいのはそんな事ではないし、言いたい事よりも聞きたい事の方が多い。 「…アンタ誰なんだ?どこなんだここは?俺はどうしてここに居るんだ?一体何が―」 「落ち着いてくれ」 急に顔が近付いた事に驚き口を閉じると、俺が黙った事を確認して男は離れた。 「ここは、私の家だ」 フフン、と自慢気に、目の前の男は笑みを浮かべる。 いやだから何だ、と言い返す間もなく、男は再び口を開いた。 「森の奥に泉があるのだが、その泉の畔で君が倒れていたから、介抱させてもらったよ」 何を言われているのか分からなかった。 森の奥?泉?倒れていた? 何言ってんだと言いかけて、水溜まりに落ちた事を思い出した。 水溜まりに落ちて、それから何かがあって俺は泉に辿り着いた、という事か? 「私が思うに、君はこの世界の人間ではないね」 そう言って、男は話し始めた。 この世界とどこか別の世界の時間が重なった瞬間に、こちらとどこかを繋ぐ扉に触れてしまったものが、稀に迷い込む事があるらしい。 そして今日、俺が現れた、と。 つまり俺は、俺が居た世界とは別の世界に来たという事になる。 どうして俺が?俺はどうなる?何でこうなった?俺は帰れるのか? 「ところで君」 人知れぬ不安感に襲われていると、ふいに両肩に手を置かれ、俺は顔を上げた。 「目の色が綺麗だね!」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加