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すぐ目の前には、透き通った空色の目と、それを縁取る銀色の睫毛。
「は?」
何を言ってるのか分からないし、何より興奮気味のコイツめっちゃ気持ち悪いな。
「ああいや、綺麗なものを見るとつい…、気にしないでくれ」
ゴホン、と咳払いを一つ。
気を取り直して、と呟き、何事もなかったかのように再び口を開いた。
「君が帰れる時間まで、あと四時間程だ。少し私の手伝いをしてくれないか?」
帰れるのか、と安心すると同時に、疑問が浮かぶ。
何故この男は、俺が帰れる事を、帰れる時間を知っているのだろうか。
しかし俺が口を開く前に、質問は受け付けないよ、と言われてしまい、俺は言葉を飲み込んだ。
「……分かった、助けてもらった恩もあるし」
「うんうん、君はいい子だなあ」
何を言っても意味がなさそうなその態度に、半ば諦めつつ呟くように言うと、更ににこやかになってしかも頭を撫でてきた。
「うるせぇな、子供じゃねぇし」
振り払う前にその手は離れ、代わりに空色の目がじっ…とこちらを見た。
「ところで君、その目、片方私にくれないか?」
何でもないように、男は言う。
ちょっと待て、今『目』って言ったか?
「…いや無理だろそれ!」
「ははは」
冗談だ、とも言わず、愉快だとでも言わんばかりに笑う。
「いや怖いわ!」
ふぅ、と息を吐き、とりあえずさっきのは冗談だった、という事にして話を進める。
「…で、何すればいいんだ?」
目をくれ、なんてまた言ったら何が何でも帰る方法を吐かせてやる…。
「…………洗い物をお願いしたい」
少し申し訳なさそうに言う男を前に、俺は目が点になった。
え、洗い物?
部屋を出た男の後を追いかけると、おそらくキッチンと思われる場所に、使った後の食器やら調理道具やら実験道具やらが、ところ狭しと積み重ねられていた?
「やってくれるか?」
「…おう、任せろ」
そう答えると、台車置いとくよ、と俺の側に木製の古そうな台車を置き、男はよろしく~、と部屋へと戻っていった。
「……よし、やるか」
その背中を見届け一つ息を吐き、俺は積み重なった洗い物へ手を伸ばした。
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