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石はまるで無声映画の上映でもするように、私と父の過ごしてきた日々をゆっくりと映し出し続けた。次々と流れていく思い出を眺めながら、そのどれもが雨の日のものであることに気がつくと、私は思わず小さく苦笑した。
父とは真逆で雨女だった私は、幼い頃から雨に見舞われ続けてきた。遠足や発表会。運動会や文化祭。大事な行事の前には、ことごとく雨に降られた記憶がある。けれど私は、雨が嫌いになったことは一度もなかった。
それは行事の当日、いつも嘘のような快晴に出会えたからだった。
石の映す映像が変わって、小学校の修学旅行の前日が映る。この頃の父はすでに蕎麦屋の仕事で忙しい毎日を送っていた。朝も夜も、一度も父に会わない日も多くあった。けれど、行事の前日ばかりは必ず早く帰ってきて、私と一緒にてるてる坊主を作ってくれた。
自他共に認める晴れ男の父が一緒に作ってくれるてるてる坊主の威力は絶大で、小さな雨女の雨パワーなど簡単に吹き飛ばして、父はいつも明々とした太陽を連れてきてくれた。
私は行事の日が晴れになることよりも、忙しい父が自分の側にいてくれることが嬉しくて、行事前に雨予報が出ていなかったときは、両親に隠れて部屋の隅にこっそり逆さてるてる坊主をつるしたことを思い出した。
石の中では父と私が、白い木綿のハンカチにゴムをかけて、いくつものてるてる坊主を窓枠に連ならせている。
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