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俺は斗真の家を出た。門の所には傘を射した有美が待っていた。
「計画通りに行ったの?」
「ああ」
「無理しちゃって」
「何だよ。無理って」
「初恋、だったんでしょう?」
「斗真にはかなわないからな」
俺達は歩き出した。
有美にはこの大芝居を唯一打ち明けていた。万が一失敗したためのサポーターとしてだった。
「でも、大和から聞いていない事が1つ」
「何が?」
「どうして今回の計画を実行しようと思ったの? 敵に塩を送るみたいじゃない」
「千穂が怪我したのってさ、間接的には俺のせいなんだよね。俺が斗真に木登りをけしかけていなかったら千穂は怪我をしなかったんだ。あの事故が無かったら千穂と斗真はもっと早くくっついていたさ」
大和、と有美は呟いて俺の髪を両手でワシャワシャと撫でた。
「ちょ、なにするんだよ」
「大和、健気。あっカラオケ行かない? 大和失恋記念兼千穂&斗真カップル成立記念」
「何だよ、それ」
思わず笑ってしまった。
今は有美の明るさがありがたかった。
俺達は方向転換して駅へと向かう。
「あ。雨、止んだみたい」
傘から手を出した有美は傘をたたんだ。
「本当だ」
「何だかいいことがありそう」
「そうか?」
「きっとあるよ。大和にも」
「そうかな」
俺達は駅までゆっくりと歩いた。
空には虹が架かっていた。
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