斗真

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 幼稚園児のことならいざ知らず、最近は泣くことだってあまりないのに。 「どうしたんだ千穂。今日は何か変だぞ」  千穂はクローゼットの中に入り、口元に人差し指を立てた。  僕が返事をする前に、千穂はクローゼットの扉を閉めた。 「おい」  クローゼットを開けようとすると部屋がノックされた。 「はい」  反射的に返事をするとドアが開いた。そこには大和が立っていた。  出会った頃は同じくらいの身長だったのに僕よりも背が高くなっている。これが成長期というやつか。 「よっ。どうだ、調子は」  大和はにこやかに部屋に入ってきた。 「うん、大丈夫だ。それより大和、今クローゼットに」 「ちょっと話、いいか?」  いつになく真面目なトーンで話ながら座る大和。  有無を言わせないその態度に負けて僕は近くに座る。 「お前、雨の日はいつも学校休むな。片頭痛か?」  僕は首を横に振る。 「じゃあ、何で雨の日は学校に行かないんだ?」 「それは……」  千穂にはこの声は聞こえているのだろうか。 「親友のこの俺にも言えないのか?」  大和は笑顔で言うけど、どこか迫力がある。 「……たいした理由じゃないさ」 「……そうか」  大和は頷いた。  静かな室内に雨音が響く。 「で? 話って?」 「俺、千穂に告白したから」  雷に打たれたかと思った。  男子と女子の友情って成立するのかな。その言葉が頭の中でリプレイされる。 「冗談だろ?」  普通に話したつもりが、声がうわずる。 「俺は本気だ」  大和は静かに僕を見返した。 「でも、何で千穂なんだ? 大和ならモテるから、選び放題じゃないか」 「斗真らしくねーな。そんな事言って。動揺しているのか?」  そう言って鼻で笑う。ムッとして返す。 「動揺? まさか」  そう言うのが精一杯だった。  大和はいぶかしげに僕を見た。 「じゃあ、応援してくれるな」 「応援?」 「彼氏彼女になるんだから、もう4人ではつるまない。朝だって俺と千穂2人で学校に行く。放課後は街に出てあいつの好きなパンケーキでも食うよ」  何て身勝手な。でも、彼氏彼女とういのはそういうものか、と考える。 「千穂はなんて答えたんだ」 「逃げた」  大和は淡々と答えた。表情から感情を読み取ることは僕でも出来なかった。 「放課後告ったら、そのまま逃げた」 「……いつから千穂の事が好きなんだ?」
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