斗真

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「去年かな。4人で夏祭りに行っただろ? 千穂と有美が浴衣着て。その時の千穂のギャップに惹かれた。中身は男なのに女らしかったそのギャップに」  僕は、10年前のあの日よりももっと前から好きなのに。  こんなことなら大和に告られる前に先に告白しておけば良かった。そうだろ? だって大和だぞ。背が高くて成績優秀、スポーツ万能、千穂の理解者。勝てるわけない。 「どーした斗真。あ、寂しいのか? お前なんてアイドルのマナちゃん追っかけていればいいんだよ」  その言い方にカチンと来た。 「大和、さっきからなんなんだよ。その言い方。僕だってなあ。僕だって好きだったんだぞ」 「何が」 「何がって。千穂の事だよ。お前よりもずっと前から好きだったんだからな」 「嘘だ」 「嘘じゃない」 「だったら何で告白しなかったんだよ。好きなのはマナちゃんだろ」  僕は大和の胸倉を掴んだ。 「マナの笑顔は千穂の笑顔に似ているから好きなんだ」 「もう一度聞く。何で告白しなかったんだよ」 「出来るかよ。僕はあいつに怪我をさせたんだぞ。千穂のその傷は今でも痛むんだ。そんな僕に告白する資格なんてあるわけないだろ」  ギィ、と何かが開く音がした。  音のする方を見ると千穂がクローゼットから出てきているところだった。  大和の胸倉から手を離す。 「斗真、ずっと私の足の怪我を気にしていたの」  僕はしぶしぶ頷いた。 「斗真の……斗真のばか。なんでそんな事気にするの。私達の仲でしょう」  そう言って僕に抱き着いた。 「私達、もう中学生だよ。そんな事で雨の日休んでいたの? じゃあ、高校生になったらどうするの? そんな理由で落第したら? このままずっと雨の日は私に会わないつもりだったの?」 「千穂……」  千穂は僕から離れて大和を見た。 「大和、ごめん。私……斗真の事が好きなの」  え、と思った。 「でも、斗真に告白して振られたらもう4人みたいな関係でいられない。そう思って告白出来なかったの。大和の告白嬉しかったよ? でもごめんなさい」  大和は。大和はどう思っているんだろう。  僕は大和を見た。  大和は、笑っていた。 「やーっと言えたか。本音を」  そして僕達を優しい眼差しで見た。
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