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砂場は私の大好きな場所だ。
公園でも幼稚園でもずっと遊んでいる。
私は砂のお城を作るのが得意だ。大小のバケツで作る砂のかたまりを組み合わせて大きなお城を作っていく。
幼なじみの斗真はその横でトンネルを作るのが好きだ。でも、最後はトンネルをお城にくっつけて、お城ごとトンネルにしてしまうのだけど。
私はお城に仕上げの小さな砂を盛って屋根を造った。
砂のお城が綺麗に出来た。
「斗真、お城出来たよ」
私は顔を上げた。
斗真の姿が無い。
「あれ、斗真どこ……」
私は左右を見渡す。さっきまで遊んでいた斗真がいない。
一陣の風がびゅうと吹いた。
冷たい風だった。
住宅地の片隅に忘れられたようにある公園。そこには私1人しかいない。そんな事に気づいて心が寒くなった。
誰も使っていないブランコが揺れる。
私は公園の遊具一つひとつを見てまわる。
ジャングルジム、滑り台、馬の遊具。
どこにも斗真はいない。
不意に目の前が暗くなった。
空を見上げると分厚い雲が太陽を覆い隠していた。辺りは真っ暗だ。
心細くなって声を上げる。
「斗真、どこ」
気づくと私は泣いていた。
泣くと同じ組のイヂワルな大和くんに笑われてしまう。
だから泣き止まなくちゃ。
ヒック、ヒックと息が上がる。
だけど、もしも今大和くんがいたらいいのに、と思った。
ひとりぼっちで公園にいるより笑われる方がまだましだった。
怖くてしゃがんでいると声が聞こえた気がした。
辺りを見渡しても誰もいない。
ふと上を見上げると木の上に斗真がいた。
細い木の幹にしゃがむようにして、両手で木の枝を持っていた。
「斗真。なにしてるの」
「ちーちゃん。降りれなくなった」
え、と思った。
大人がいればいいけど私の身長では助ける事が難しい。
「どうして。いつも木登りなんてしないのに」
「大和がさ、俺はジャングルジムのてっぺんに立てるって言うから。僕だって、って思って……」
「もう、ばか。斗真のばか。……待ってて。お母さんたち呼んでくる」
斗真はちーちゃんと私を呼んだ。
「行かないで」
斗真も泣いていた。
お母さんたら、何で早く帰って来ないの。ちょっとそこまでって言っていたのに。
ポツリ、と何かが頭のてっぺんを濡らした。
見上げるといつの間にか黒くなった雲から雨が降っていた。
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