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ではない。ただ、私が透明人間になっただけ。
次こそは同じ失敗を繰り返さない。友達だって作る。転校が決まった時、そう決意した。
この学校に来て友達ができた。いじめられもしないし、透明人間にだってならない。
でも、隣のクラスの千穂ちゃんを見ていると、あなたはこれでいいの、ともう1人の自分に問いかけられている気がした。
先生の笛が鳴った。そして全員集合の号令がかかる。
私達が先生の周りに集まると、先生は授業の締めを話して体育の授業が終わった。
皆が体育館を出る。
「有美、先に行ってて。私、先生に聞きたいことがあるから」
そう言って美奈は先生の所へ行ってしまった。
こういう時、友達なら待っていた方がいいのか。
悩む私の横を千穂ちゃんが通り過ぎる。
私は目で追いかける。
「っあの」
気づいたら千穂ちゃんを呼び止めていた。千穂ちゃんは振り返る。
「私? ……えっと、あなた、転校してきた有美ちゃんだよね。どうしたの」
「一緒に教室までいかない?」
千穂ちゃんは一瞬目を丸くして、笑った。
「うん」
体育館を出ると、空が曇っていて薄暗かった。風も吹いている。
「なんか、雨が降りそうだね」
私は千穂ちゃんに言う。
「雨降るよ」
「え、天気予報で言ってたの?」
「ううん。足首が痛い時は雨が降るの」
そう言って千穂ちゃんは立ち止まり、右足首をブラブラと振った。
「どういう事?」
「小さい頃ね、一緒に遊んでた斗真が木から落ちて、私が下敷きになったの。斗真は私がクッションになって怪我はなかったんだけど、私は足首を骨折しちゃって。その古傷が雨の日になると痛くってね」
少し足首をブラブラさせると、私達はまた歩き出した。
「だから体育を見学してたんだね」
「足が痛くて走れないからね」
千穂ちゃんは話してみると普通のいい子だった。
噂を聞くだけだった傍観者の自分が恥ずかしく思えた。
「有美ちゃんは私に話しかけていいの? 美奈ちゃんになにか言われない?」
一瞬言葉に詰まった。
「……私、前の学校で友達いなかったんだ。私に話しかけるとグループから睨まれる。そんな雰囲気で。今の千穂ちゃんと同じ」
「だったら、尚更私に話しかけない方がいいよ。前の学校と同じになるよ」
「同じだからほうっておけない」
まるで2人を天秤にかけているようだ、と思
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