あたしの青い空

2/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
木野の高めの声がグラウンドに響く。 教室がグラウンドに近くてほんとによかった。 木野の声も姿もこの場所でなら堪能できる。 校舎2階の西の端の窓際、最後尾。 あたしの、あたしだけの特等席。 「今日も、いい天気」 ぐっと大きくのびをする。 明日もあさっても晴れてるといい。 木野の野球やってる姿を見れるから。 「っかれさましったー!」 独特な挨拶が終わって、どろどろになった戦士たちが帰還する。 夕陽がおちるぎりぎりまでできるからうちのグラウンドはいい、って木野が前に言っていた。 でも、逆に朝練は薄暗いらしい。 太陽が徐々に校舎の裏から顔を出すところに向かって、ボールを打つのが好き。 ファアルになるらしいけど。 守備は苦手。 止まってるのが好きじゃないから。 でも、打つ前のボールをぐっとにらんでるのは得意。 最後の最後まで引きつけて打てる。 これは安野君が言ってた。 木野の野球の話ならなんでも知ってるのに、 あたしは木野の誕生日すら知らない。 家族構成もあやふやだし(だって木野の話だと、弟が3人いて、妹が2人いて、姉と兄が1人ずついる、ってばかな話)、     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!