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木野の高めの声がグラウンドに響く。
教室がグラウンドに近くてほんとによかった。
木野の声も姿もこの場所でなら堪能できる。
校舎2階の西の端の窓際、最後尾。
あたしの、あたしだけの特等席。
「今日も、いい天気」
ぐっと大きくのびをする。
明日もあさっても晴れてるといい。
木野の野球やってる姿を見れるから。
「っかれさましったー!」
独特な挨拶が終わって、どろどろになった戦士たちが帰還する。
夕陽がおちるぎりぎりまでできるからうちのグラウンドはいい、って木野が前に言っていた。
でも、逆に朝練は薄暗いらしい。
太陽が徐々に校舎の裏から顔を出すところに向かって、ボールを打つのが好き。
ファアルになるらしいけど。
守備は苦手。
止まってるのが好きじゃないから。
でも、打つ前のボールをぐっとにらんでるのは得意。
最後の最後まで引きつけて打てる。
これは安野君が言ってた。
木野の野球の話ならなんでも知ってるのに、
あたしは木野の誕生日すら知らない。
家族構成もあやふやだし(だって木野の話だと、弟が3人いて、妹が2人いて、姉と兄が1人ずついる、ってばかな話)、
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