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ザァー
雨の音。
目が覚めると見たことのない部屋にいた。
頭が痛い。体も怠い。
ここはどこ?
辺りを見回すもどこなのかわからない。
記憶を辿ろうとするも同じことだった。
しばらく呆然としていると、
障子の前で男の人が声をかけてきた。
落ち着いた品のある声だった。
「おはようございます。お目覚めですか?」
「…はい」
誰だろう?
戸惑いながらも答える。
「開けてもよろしいですか?」
「どうぞ」
「失礼します」
その声の主こそ、雨宮倫太郎さんである。
「初めまして。私、雨宮倫太郎と申します。ここの主人です。体調はいかがですか?」
「あっ、私は雨音ゆかりと申します。少し頭が痛いのと怠い感じがします。あの、ここは一体…私はなぜここにいるんでしょうか?」
「覚えていないのですか?昨夜雨が降る中、この屋敷の前で倒れていたんですよ。」
雨の中、倒れていた?
「そうだったんですね。ご迷惑をおかけしてすみません。」
でも、私の知る限り、こんなにすごいお屋敷は知らないし見たこともない。
どうやってここへ来たのだろう?
「食欲はありますか?朝ごはんの用意ができています」
「でも、助けていただいて、休ませてもらって、ご飯もだなんて申し訳ないです。」
「当たり前のことをしたまでです。人が倒れているのにほっとけないでしょう?倒れるなんて余程のことです。体調も優れないんですから、もっと甘えていいんですよ?」
見ず知らずの私を助けてくれて、こんな素敵な言葉をかけてくれて、涙が出そうになった。
見知らぬ場所、見知らぬ家で訳がわからず心細かったのだ。
「…ありがとうございます」
私は雨宮さんについて、食事をとる部屋へと向かった。
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