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十年後
――やあ、久しぶりだね。元気にしていたかい?
私のこともしっかり覚えてくれているようだね。うれしいよ。
そうかい? そうは言っても、もう十年も前だからね。
もちろん覚えているさ。あのドアベルの転がるような音も、このカウンターの焦げ跡も、君のおじいさんのことも、もちろん君のことも。
あの時の君はまだ、大人になりかけの生意気なティーンエイジャーだったね。ハイスクールを出たばかりで、残りの退屈な人生にうんざりとした顔をしていたよ。
そんなことはない。若いころなんて、みんなそんなものだよ。今思えば、当時の私は君とよく似ていたんだろうね。そうでなければ、新聞社の編集長と喧嘩しても、すぐに辞めてしまうことはなかっただろう。そのことについて、後悔はしていないけどね。若さというのは、我慢を知らないものだね。おっと、今の君をどうこう言っているわけじゃあないよ。
ところで、ミスター・グラントはまだ健在かな? ……そうか。もう亡くなって五年も経つのか。残念だよ。
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