姉さんからのSOS!?

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姉さんからのSOS!?

 10分ほどして、珍しいことに姉さんの方からからLINEが来た。 『悪いんだけど、ホームセンターで非常用持ち出しセット買ってきてくれない?』  どうやら旦那と誤爆したらしい。たまにそそっかしいところがあるのが可愛いと思いつつ、 『旦那と間違えないでよ』 と、素っ気なく返すと、 『あなたに頼んでるのよ。うちの周り、雨が本当にひどくて。避難準備指示が出たのよ。旦那は休日出勤で帰って来ないし』  本当に頼まれてしまったので、急いで車を出してホームセンターに向かう。こっちは雨はさほど降っておらず、簡単に目的のものが買えた。  車で30分ほどの距離にある、姉さんの家に近づくと雨足が強くなってきた。川の水位も上がって来ているようだ。ちょっと心配になって来た。スマホがこの地域に避難準備勧告が出たことを伝えている。  緊張の中、目的地にたどり着くとすぐに姉さんが出迎えてくれた。 「ありがとう、助かったわ」  久しぶりに見る姉さんはやっぱりきれいだが、不安そうな顔を見せている。 「ううん、姉さんのためだもの」 「あら、嬉しいこといってくれるのね」  一瞬、自分の想いをぶつけようと思ってしまう。部屋着の姉さんを見て、よこしまな考えが浮かんだ。 「あの……姉さん」 「なあに?」  しかし、外から雨音に混じって車のエンジン音が聴こえてきた。仕事のはずの旦那さんが帰ってきたのだ。 「ただいまー。仕事早引けしてきたよ。あれ? 弟さん、久しぶりだね」 「あなた、おかえりなさい! 仕事だっていうから、水を買ってきてもらったの」  さっきまで不安な顔を見せていた姉さんが笑顔になった。 「そうか、それはすまなかったな」 「いえ、大丈夫ですよ。このくらい」  幸せそうな二人を見て、ぼくは家路につくことにした。  また来ると型通りのあいさつをして車に乗ると、雨足が弱まってきた。  恋の終わりというのは、相手の幸せを祈ってあげること。悔しいけど、それが一番だと何かの小説で読んだことを思い出した。  少し晴れ間が見え、避難準備勧告も解除された。一安心しながら車を走らせる。  また、雨の日には姉さんにLINEしてしまいそうだけど、素直に幸せを祈れるようになろうと、旦那が帰って来た時に見せた、姉さんの幸せそうな顔を思い出しながら、ぼくは心に誓ったのだった。
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