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ぼくは、雨の日が好きだ。
もうすぐ25歳になるのにいまだに実家にいる。日曜日、朝ごはんを食べながらテレビのニュースを見ていた。
アナウンサーが真剣な顔をして気象情報を読み上げている。
「今日は雷を伴う強い雨が降るでしょう。土砂災害に警戒を……」
これを聞いた瞬間に早速スマホを手にとって2歳年上の姉さんにLINEする。
『雨降るみたいだけど大丈夫? 食べ物とかある?』
すぐに既読がついて返事が来た。
『大丈夫だよ。いつもありがとう』
それを見てホッとひと息ついたぼくは、朝食を終えると、まるで残り香を求めるかのように、姉さんが使っていた部屋に入った。
既に半分物置と化しているが、少し前に流行ったバンドのポスターや友達との写真など、確かにそこに彼女がいたことを思わせる物が残っている。
去年お嫁に行った姉さん。僕はあなたが好きだった。
いや、今でも大好きだ。
子供の頃から一緒に遊んでくれて、たまに親に叱られるといつもかばってくれた。
やがて歳を重ねるごとに、女性らしさが見えて、まぶしく見えるあなたが好きなんだと気づいた。けれど僕は弟。血が繋がっていては結婚はできないし、恋心を押し付けるのも迷惑がかかる。結局眺めていることしか出来なかった。
彼氏ができて結婚するって聞いた時は、覚悟はできていたけど涙が止まらなくなった。結婚式にも出たけど、現実感が無かった。
思い出に慰められながら、もういい加減、姉離れしないといけないと思っている。それなのに、姉さんが好きな気持ちは変わらない。
とは言え旦那がいるのにLINEやメールを無闇に送ったり、電話するわけにもいかない。だから僕は、姉さんにLINEできる雨の日が好きだ。
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