雨枯らし

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一瞬の静寂の後、拍手が沸き起こった。倫太郎も思わず拍手していた。 すると、1人の女性が前に立つと観客に向かって声を張り上げた。 「昨今私達を苦しめる長雨。不作、災害、人々の心にまで巣喰い始める邪神なり。この邪神を今ここで『雨枯らしの舞』にて断たんとす!」 ドン!と太鼓の音が鳴り始める。 すると櫓の最上段に真っ赤な着物を纏った人影が現れた。それは誰もが息を飲むほど綺麗で妖艶な姿をした女性だった。 その女性は流し目で辺りをゆっくりと見回すと、傘を片手に持って踊り始めた。滑らかで艶やかなその舞に人々は生唾を飲み込んだ。 すると、ぽつぽつと雨が降り始めた。そして次の瞬間、いきなり体が飛ばされそうになるほどの強い風が吹き、ザァッと強い雨が降り出した。 櫓に掛かる提灯と暖簾は激しく煽られ、櫓もギシギシと揺れた。 倫太郎は慌てて夏希の手を握り締めた。夏希も必死に倫太郎にしがみつく。 境内は混乱していた。倫太郎も夏希を抱きしめ、神社を後にしようとしたが、階段前に人が殺到して逆に危ない状況に陥っている。 その時だった。なぜか階段の下が異様にざわめき出した。そして
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