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「天原総理だ!」
そう誰かが叫んだ。その瞬間人々は逃げ惑うのをやめ、視線を階段の下に注いだ。そして現れたのは紛れもなく内閣総理大臣の天原純一郎だった。
天原は周囲の視線を浴びながら境内に足を下ろすと、周囲をゆっくりと見回した後、ありったけの大声を上げた。
「今『雨宮の力』が皆さんを苦しめている長雨を撃ち破ろうとしている!私からのお願いです!どうか彼の舞を見届けて欲しい!」
彼!?
倫太郎はハッと振り返って櫓を見た。強風に煽られながらも、舞を踊り続ける絶世の美女。はて?どこかで……まさか!?
「あれ!雨宮亭の庄助さんやないか!」
喉元まで出てきた答えを誰かが叫んだ。あれは定食屋の頑固親父だ!倫太郎はその事実に愕然とし、少しでもトキめいた自分に絶望した。
そんなことはともかく、人々は天原の声に導かれるまま、櫓の前に駆け寄った。
さすがカリスマ総理大臣だ。
「頼む!私達を救ってくれ!」
天原純一郎がそう叫ぶと、皆が雨宮の親父に向かって願いを叫んだ。雨宮の親父はそれに応じるように懸命に乱れ狂うように舞った。
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