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雨はどんどん強くなる。風はどんどん吹き荒れる。それでも人々は叫ぶ。夏希も叫ぶ、倫太郎も叫ぶ。懸命に叫ぶ中で倫太郎はふと思った。
この長雨の中、いつの間にか最初から諦めるようになった。体育祭や夏希とのピクニックや海やプール。
もし、本当に今ここで雨が止むなら止んで欲しい。俺が晴れた世界に望むもの…
「雨宮の親父ィ!俺に夏希の水着を拝ませてくれぇ!」
その瞬間、雨宮の親父は力強く傘を天に突き刺した。
するとそれまで大粒だった雨の勢い次第に小粒の雨となり、小雨となり霧となる。
そして櫓の上空の雲が少しずつ裂け始めた。
人々は祈った。裂けろ、裂けろ、裂けろ裂けろ裂けろ裂けろ裂けろ!
そして一瞬の静寂が訪れた。そして倫太郎は夏希の手を強く握りしめ、見上げた空を見て、涙を流した。
「綺麗だね」
「ああ」
一面に広がる満天の星空。キラキラと輝くその光景を見て、倫太郎は今までの人生の中で一番綺麗だと思った。
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