雨枯らし

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「ロン!」 「げ!」 ナオちゃんは不敵な笑みを浮かべ麻雀牌をゆっくりと倒した。 「リーピンタンヤオサンショクイーペーコードラドラ!」 「うぎゃー!倍満かよ!」 竜司は両手で頭皮を掻き毟る。ノリオはホッと胸を撫で下ろして、「危険だと思ったんだよ」と手に持っていたアガリ牌を卓にポンと投げた。 今日もうちの店にたむろしてワイワイガヤガヤとする4人。カオルもいつものように隣の席で「いけ、いけ!がー!ちくしょう!」と競馬新聞を叩きつけている。 外は相変わらずの雨。今日は一段と雨足も強く風が吹き荒れる悪天候だった。ガタガタと軋む扉の向こうで暖簾がバタバタと勢いよく風に煽られていた。 「こんな日は店閉めるのが一番だ」 ナオちゃん達がそう言って庄助の店にやってきたのは数ヶ月前のことだった。 長雨による天候不順で影響で客足も減り、仕入れ値も爆上がりしたせいもあり、暇を持て余した商店街の店主達。 最初は時たま飲みながら愚痴をこぼしていたが、いつの間にかほぼ毎日ここに集まるようになった。 「庄助も入れよ」 「仕込み終わったらな」 「さすが繁盛店の店主は言うこと違うねぇ」 庄助は「バカ言うな」という言葉を飲み込んだ。その言葉に全て集約してる気がしたからだ。 みんな気丈に振舞っているが、それはただ振舞っているだけにしかすぎない。それぞれ人生の大半を費やしてきた店をほっぽり出して、この場所にいるということが何よりの証拠だ。 雨の音がより一層激しさを増す。風と共に壁を叩き、悪意を持って店内に侵入してことようとしている。
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