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庄助はその男の瞳をじっと見た。男もまた真っ直ぐな視線を庄助にぶつけた。
しばらく無言で対峙する2人。息を飲んで見守るナオちゃん達。
雨降る音だけが静かな店内に響き渡る。
「私は定食屋の亭主ですから、そんなこと出来やしませんよ」
沈黙を破ったのは庄助だった。軽く息をついて首を横に振った。男は何も言わずにただ庄助を見続ける。
「申し訳ないんですが、他に注文ないのであればお引き取りください。天原さん」
「そうか、邪魔したね」
天原と呼ばれた男はあっさりと引き下がった。席を立ち上がり入口に向かった。扉に手をかけた時、
「私は『雨宮の力』信じているよ」
そう言い残し、天原は土砂降りの外へと出ていった。
「おいおいおい!庄ちゃん、どういうことだよ!?」
「なんで天原がこんな店にやってくるんだよ!」
ナオちゃん達は今さっきここで起きたことに驚きを隠すこともなく庄助に詰め寄った。
「庄助、天原総理とどういう関係なんだよ!てかどうしてお前を天原が訪ねてきたんだよ!それに『雨宮の力』ってなんだよ!」
彼らの問いに答えることなく、ただただ入口で強い雨風に煽られている暖簾をじっと見つめた。
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