僕の雨-1

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結局、夏休みの休息日をどう遊ぶかの前に、僕の勉強をどうするかの議論に昼休みは費やされた。あの渋い表情を僕は一生忘れないだろう。 午後の授業を終えて帰り支度をしていると、窓の外が急激に陰り始めていた。 みるみるうちに辺りが薄暗くなっていく。ゴロゴロと響く音が、間違いなく夕立の訪れを告げていた。 カバンを見たが、どうやら折りたたみ傘を入れ忘れている。参ったな。 「あれ、もしや傘忘れた?珍しい」 帰り支度を終えた君が側に来ていた。全くもってその通りだ。いつもなら鞄に入れっぱなしだから、忘れないはずなのに。 「今日は予備持って来てるから、使いなよ」 そういって、君は折り畳み傘を差し出す。 どこかで見た覚えがあったが、どこで見たか思い出せない。 しかしともかく、僕はそれを遠慮なく受け取った。 僕は雨が好きだ。草木や地面で弾ける音、香る匂い、そのどれもが好きだ。 でも僕は、よく折りたたみ傘を持ち歩いていた。 雨は好きだが、雨に濡れたいわけではないのだ。
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