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「あなたから殴ったわけではないわよね?」
「あぁ。先生以外は誰も信じてくれなかったけどな」
桐生院の話によると、その先輩がわざとぶつかってきて、因縁をつけてきたという。髪やら服装やらが生意気だと言われながら、時が過ぎるのを待っていたらその態度も気に食わなかったらしい。
「1人が殴りかかってきた。それを避けたら、そのままその男子は転倒し、それを見て次々に襲い掛かってきたという。だから、ビビらせるために、1発ずつ殴ったら大騒ぎになった」
桐生院もよくわからない間に、停学処分になったという。完全に桐生院のせいではないことも明白だったから、その4人は桐生院よりも長い停学期間となった。それで逆に生徒たちは「4人は大けがを負わせられて入院している」と勘違いしたらしい。
「もうすぐ、アイツらの停学期間も終わるから、何も起きないといいけどな」
そう言いながら、桐生院は真剣な顔で私を見た。
「なんかあったら言えよ」
桐生院の顔に少しドキッとしたが、それを隠すように私はヘラッと笑った。
「わかったよ。もしもの時は、葉鳥さんに守ってもらうから」
「なんで、葉鳥なんだよ!」
ちょっと不機嫌そうな顔になった桐生院はすねたような顔をする。その隣を歩きながら、私たちは帰路にたった。
後ろを誰かにつけられているとも知らずに…。
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