第3章

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そういえば、今日があいつらの停学明けだったことを思い出したのだ。なんで梓のことを知ったのかは知らないが、アイツに使って何かする可能性があるとわかっていたはずだった。 別にアイツを助ける義理はない。 屋敷で見たときから変わったヤツだと思った。俺のことを知ろうとするやつなんて、高校に入ってからいなかった。たった2週間で、彼女の無茶ぶりを振られるのも慣れてきた自分がいた。クルクル表情が変わる彼女を見るのが面白くて、彼女の心から笑顔を見るとどぎまぎした。 「もし、アイツに何かあったら…」 涙を流す彼女を想像したら、俺の中に殺気のようなものを芽生えた。 部室の扉の前に到着した同時に、思い切り扉を開け放つ。 「梓!大丈夫…!?」 俺が見たのには異様な光景だった。 紐で手を縛られている梓の周りに、顔を真っ青して膝をつく4人の男子たちの姿。 「あ!桐生院」 にっこり笑った彼女は俺の元に駆け寄った。 「聞いてよ。新しい飼い主かと思ってきてみたらさ、桐生院にちょっかい出してきた4人がいてさ。油断して手を縛られちゃって」 彼女は縛られた手を俺に見せてくる。 「だけど、足は縛られなかったから、全員の股間に蹴り入れて、他の悪事をバラすぞって脅してみた!」 「悪事?」 「こいつら、たばことか酒とか飲んでいるのを新聞の記事にのせようと思って、私調べていたんだ。だから、証拠写真もばっちり」 にっこり笑って、自慢げに言う彼女はいつもの彼女だった。それがなんだかおかしくって、俺は笑った。 「なんで笑うのよ。…早くこれ、はずしてよ!」 「わかったよ…その前に」 俺はふんわり彼女を抱きしめた。
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