第1章 

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4時間目の授業終了の予鈴が鳴り響く。移動教室だった私は友人たちと一緒に教室へ戻っているところだった。 「次の記事、どうしようかな」 「梓、また今月の記事のこと考えているの?新聞部は大変ね」 「梓は部活命」 友達の美紀と絵里が笑いながら、私を見た。新聞部の悩ましい問題は自分で記事にできる学校ニュースを探さなくてはならないのだ。行事とかがあればいいのだが、それは難しい。 「たまには私と遊べ!」 「おっと!」 友人の詩織に後ろから抱きつかれてバランスを崩しそうになるがなんとか踏ん張る。 「あっ」 じゃれ合っていると、美紀が前からやってくる男子に気がついた。金髪で目つきの悪い男子の制服は着崩され、首にはネックレスがジャラジャラと音を鳴らす。 私は会話をとめて、彼が横を通り過ぎるのを待った。 「あれ、入学式から暴力沙汰おこしたっていう、問題児の1年生くん?」 「そうそう。さすが、新聞部ね」 「え?そうなの」 「そういう噂だよ。停学になって最近出てきたんだよね?」 「確か、そう」 話題の1年生の名前は桐生院翔。入学式に私たちの同級生を殴って暴力沙汰を起こし停学となったという。現場にはいなかったので事情は分からないが、5月半ばから登校しても先生でさえ近づきたがらないらしい。 「でもさ、私この前の雨の日に、公園で彼を見たとき」 「…もしかして、捨てられた子犬を拾っていた?」 「そう!美紀なんでわかったの?」 詩織が驚いて、美紀を見た。 「私も昨日の雨の日に、彼が川岸で捨てられた子犬を拾っていたのを見たのよ」 「私も見た。一週間前に、子猫拾っていた」 「えっ!絵里ちゃんも!?」
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