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第2章
桐生院は子犬を抱えたまま、尾行をする私の存在に気づかず、前を歩いている。すでに彼の腕の中には子犬が2匹もいる。
彼はどんどん進んでいくが、ここは高級住宅街である。一般家庭育ちの私には居心地が悪い。
すると、彼は大きな屋敷の門を開き、その中に入っていった。
「ここが桐生院翔の家?…デカッ!」
その屋敷は学校の校舎ぐらいの大きさで、洋風のたたずまいをしていた。
門の前まで来て、彼がお金持ちだと知り茫然としていた。
「当家に何か御用でしょうか」
門の前にいたから不審に思われたのかと思い振り返ると、燕尾服を着た白髪交じりの紳士が優しくほほえみかけた。
「えっと…」
「その制服は…。もしかして、翔さまのご友人ですか!?」
「はい!?」
目を輝かせて彼は私の両手を握った。
「どうぞ。翔さまはもう帰られていると思いますので、さぁ中へ」
「え、あの…」
少々強引に、背中を押され、私は屋敷の門をくぐった。
案内されたのは、客間らしき部屋。真ん中には年代ものと思われるテーブルとソファが置かれ、そこに座るように紳士に促される。
ここの部屋に来るまで骨董品らしき壺や銅像があったが、あれはいくらぐらいするのだろうかなどを考えながら私は現実逃避をしていた。
すると、勢いよく扉が開き、桐生院が中に入ってきた。
「羽柴、何をそんなに騒いで…」
Tシャツにジーパンというラフな格好に着替えていた彼は、私の存在に気づき足を止める。
「…誰?」
細い目は睨まれているような気がして、体が固まる。
「えっ?ご学友ではないのですか」
「すみません。説明できる隙がなくて。…桐生院くん、はじめまして。私は同じ高校の2年生の森谷梓です」
私は、正直に桐生院が雨の日に動物を拾って帰っているところを見た人たちについて話した。
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