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「そんなに見ている人がいたか」
怖くて俯いて話していたが、反応が気になって、顔を上げたら驚いた。桐生院の顔が真っ赤に染まっていた。
「…どうしたの?」
「すげー、恥ずかしい。…男が子犬を可愛がるとか」
桐生院は両手で顔を覆い、膝をついた。
乙女かとツッコミを入れたくなる反応に、私は心の中で思った。
(なんだ、この可愛い生き物。これが問題児と言われている桐生院翔?)
いつもだったら、シャッターチャンスとか言ってスマホを構えるが、毒気を抜かれてしまった。
「動物好きは男にも多いから問題ないよ」
「そうですよ!動物にもお優しい翔さまだからこそなんですから。少し問題もありますが…。梓さま、翔さまご保護した子犬、子猫たちご覧になりますか」
「ぜひ」
「翔さま、梓さまがワンちゃん、ネコちゃん見たいとおっしゃっていますよ!さぁ、お立ちになって」
まだ、顔を上げない桐生院を羽柴は慣れた要領で慰めている。これはいつものことなのだろう。
(もしかして、そんなに怖い人ではない?みんな誤解している?)
頭の中に疑問だらけになり、考えこんでいると、いつの間にか、ヘタれていた桐生院が立ち直っていた。
「わかった。こっちだ」
立ち上がり、私を動物たちのもとへ案内してくれるらしい。
「ねぇねぇ、なんでいつもそんなに怖い顔しているの」
案内されている間に、自分の頭の中の疑問を解決しようと桐生院に話しかける。
「これが普通の顔だ」
「髪染めているの?」
「これは地毛だ。父親がイギリス人なんだ」
「なんでヤンキーっぽい感じに、いつも制服着崩している?」
「質問多いな!中学のとき、イギリスの学校行っていたから、こっちの漫画や本で勉強して…ヤンキーっぽい?」
「うん。似合っているけど怖い」
桐生院は立ち止まって、ブツブツとつぶやき始めた。
「なぜ、そうなった。参考になるものを葉鳥に集めさせたはず…」
「翔さまの言いつけ通り、高校時代に読んで憧れたごぐせんやろくでなしREDなどの私のベストセクションをお渡しましたよ」
私たちのあとをついてきていた葉鳥は胸を張って言った。
「それって、全部不良系の学園コメディ」
「葉鳥!」
葉鳥はきょとんとして、私たちを見た。桐生院が何を求めていたのか全く理解していなかったようだ。
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