0人が本棚に入れています
本棚に追加
「葉鳥、あの部屋のテーブルにお茶を用意しておいてくれ」
「わかりました」
桐生院はため息をついて葉鳥にお願いすると、葉鳥は深々と礼をして立ち去った。
「だから、俺の周りに誰も近づこうとしないか」
「なんというか、ドンマイ!」
残念すぎる内面に笑いをこらえながらも、桐生院の背中をポンとたたく。
「結構腕っ節も強いって聞いたし、まぁ怖がられる理由は他にもあるよ?」
「それは、あっちでボクシングをやっていたからで…。でも、梓、先輩は俺のこと怖くないのか?」
「え?怖いけど?」
ガクっと肩が下がる桐生院の後ろ姿を見ながら、言葉を続ける。
「怖いって思っていたら、何もわからないままじゃん!私のジャーナリスト魂が言っている!私は怖いって思う以上に、あなたのことが知りたいと」
桐生院の前に回り込んで、にっこり笑って彼の顔を覗き見る。
彼は目を丸くしたが、顔をそらし足早に前へと進んだ。
「ここだ」
しばらくして、長い廊下の先の大きな扉の前で止まった。
扉を開くと、そこは広い寝室から家具を取りはらった感じの部屋だった。
そこには無数の子犬と子猫がそれぞれ思い思い、遊んだり寝たりしている。
「…一体、何匹いるの?」
「犬は30匹に、猫が21匹、合わせて51匹だ。…雨の日はここで飼育してい、うわ!」
複数の犬が桐生院の背中に飛びついた。桐生院はバランスを崩し、倒れた。すると、次から次に犬や猫がオモチャを見つけたとのごとく、彼の体の上に乗っていく。
「うーーーー」
口もふさがれ動けなくなった彼は必死に助けを求めているようだ。
「ぷっ!あははははは」
その姿が面白すぎて、腹を抱えて笑ってしまった。
「うーー、お前少し笑ってないで助けろ!」
やっと口をふさいでいた猫を掴んで起き上がった桐生院は、笑っている私に起こる。
頭にも乗る子猫が「にゃあ」と鳴き、それもおかしくて再び笑ってしまう。
「翔さま、お茶をお持ち致しました。…また、遊ばれていますね」
溜息をついて葉鳥が入ってきた。
「本当に面白い」
「梓さま、こちらでお茶とお菓子でも」
「ありがとうございます」
桐生院をスルーして、隅に置いてあった、折り畳み式のイスとテーブルを出して、お茶を置く。
最初のコメントを投稿しよう!