第2章

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「葉鳥、あの部屋のテーブルにお茶を用意しておいてくれ」 「わかりました」 桐生院はため息をついて葉鳥にお願いすると、葉鳥は深々と礼をして立ち去った。 「だから、俺の周りに誰も近づこうとしないか」 「なんというか、ドンマイ!」 残念すぎる内面に笑いをこらえながらも、桐生院の背中をポンとたたく。 「結構腕っ節も強いって聞いたし、まぁ怖がられる理由は他にもあるよ?」 「それは、あっちでボクシングをやっていたからで…。でも、梓、先輩は俺のこと怖くないのか?」 「え?怖いけど?」 ガクっと肩が下がる桐生院の後ろ姿を見ながら、言葉を続ける。 「怖いって思っていたら、何もわからないままじゃん!私のジャーナリスト魂が言っている!私は怖いって思う以上に、あなたのことが知りたいと」 桐生院の前に回り込んで、にっこり笑って彼の顔を覗き見る。 彼は目を丸くしたが、顔をそらし足早に前へと進んだ。 「ここだ」 しばらくして、長い廊下の先の大きな扉の前で止まった。 扉を開くと、そこは広い寝室から家具を取りはらった感じの部屋だった。 そこには無数の子犬と子猫がそれぞれ思い思い、遊んだり寝たりしている。 「…一体、何匹いるの?」 「犬は30匹に、猫が21匹、合わせて51匹だ。…雨の日はここで飼育してい、うわ!」 複数の犬が桐生院の背中に飛びついた。桐生院はバランスを崩し、倒れた。すると、次から次に犬や猫がオモチャを見つけたとのごとく、彼の体の上に乗っていく。 「うーーーー」 口もふさがれ動けなくなった彼は必死に助けを求めているようだ。 「ぷっ!あははははは」 その姿が面白すぎて、腹を抱えて笑ってしまった。 「うーー、お前少し笑ってないで助けろ!」 やっと口をふさいでいた猫を掴んで起き上がった桐生院は、笑っている私に起こる。 頭にも乗る子猫が「にゃあ」と鳴き、それもおかしくて再び笑ってしまう。 「翔さま、お茶をお持ち致しました。…また、遊ばれていますね」 溜息をついて葉鳥が入ってきた。 「本当に面白い」 「梓さま、こちらでお茶とお菓子でも」 「ありがとうございます」 桐生院をスルーして、隅に置いてあった、折り畳み式のイスとテーブルを出して、お茶を置く。
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