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夜中になり、小刻みに水滴が肌を打っていた。
傘を差すか、差さないか迷う程度の雨。
部活帰りの学生であれば立ち漕ぎで家路につくだろうか。
右手にぶら下がった包丁からピンク色の液体が滴り落ちる。
太陽が顔を出し、私の黒と白と赤の装飾を照らしている。
私は今、臓器をすべて取り出してしまったかのように空っぽだった。
先ほど体の中から吐き出した黒い何かは、傍で倒れている女の亡骸に移ったのだと思う。
もっと降ってくれ。
この事実を洗い流すほどの、強い雨に打たれたい。
私自身を溶かすくらい、もっと強烈な酸でもいい。
この世から今すぐ消えてしまいたい。
しかし、体が消えるどころか、
いつまでも、白いTシャツに染み込んだ血の色すらも色褪せることはなかった。
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