1119人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、エリックのハイドロアローはかなり強い。俺の剣が魔法を弾く素材でなければ簡単に貫かれていたであろう。
強敵。現勇者であるディルク・ウォルソンには及ばないが、かなりの強敵だ。
「これは久々に――」
「レオ、避けろっ!」
理解が追い付かなかった。
雨とエリックという強敵の所為で崖の上に弓兵がいることを忘れていた。エリックとの距離が空いた瞬間を狙って矢が俺へと向かっいたのだ。
本来であれば、ソレは俺に当たるハズだった。
うかつにも敵を忘れてしまった俺のミスだった。
俺をかばって複数の矢に射られたトムは静かに倒れ込んだ。
もうその瞳にはなんの光も映していない。
「トム――」
トムへ身体を向けた刹那、俺の背中に一本の矢が突き刺さった。矢は内臓の一部を貫き激痛が走る。他にもいくつか矢が身体に突き刺さった。
「……レオ殿、すまない」
エリックはそう呟くと剣を収めて森の中へと姿を消した。
「ほっほっほっ、憐れだのぅ賤民は」
モルフも愉快そうに俺の見て笑うと弓兵を連れて森の中へと去って行った。
雨足は強くなるばかりで収まる気配は一向にない。貫かれた箇所からは血があふれ雨と泥に混ざりあって溶けていく。
「トム……」
最初のコメントを投稿しよう!