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あちこちで上がる火の手と怒号、破砕音、魔法が弾ける音、金属と金属がぶつかる音、闘いの音が戦場に広がる。
獣人と人間が入り混じる戦場の中、悲嘆にくれる騎士たちがいた。
アセイム宿場街の中央部よりもやや南側。そこにはあまり獣人たちも浸透しておらず戦闘も散発的であったが指揮は最低であった。多くの兵が己の武器を捨て少しでも戦場から遠ざかろうとするが獣人と出会い戦死した。ここにいる兵のほとんどはアセイム宿場街の第2防衛ラインで獣人と相まみえた兵ばかりである。
彼らのほとんどは前線で感じた獣人の恐ろしさを未だに覚えており、半ば恐慌状態であった。本国ではそれなりの地位にいたであろう高名な騎士が自慢の剣を投げ捨てて逃げていく情けの無い姿をさらすこともあり、指揮はまさに最低以外の何物ではなかった。
アセイム宿場街の駐屯騎士であったデモンは目の前に広がる惨状を嘆きながらも抗えない現状についぞ獣人に向けて剣を薙ぎ払った。デモンとその配下である15名の騎士は予備部隊兼住民の避難場所の護衛として南側を守護していたのだが、第2防衛ラインの崩壊によって急遽北進した。
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