第20話 アセイム宿場街撤退戦 下

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 その理由は人間軍の東側へ差し向けた第6軍と対峙していた敵軍にある。第6軍によってその足を止めたと思っていたが殿(しんがり)を残して北進……つまり、サナルたちがいる中央へと向かってきていた。  中央へ向かってくること自体は問題はないとサナルは思っている。問題なのは何のために中央へ来るのかである。これまでの報告を聞く限り第6軍と対峙していた敵兵は元ハイレルト王国の精鋭である。戦いぶり戦術の展開の仕方からその指揮官もまたハイレルトで戦っていた歴戦の猛者であることが伺えた。  そんな歴戦の猛者が死地と化している中央へ来るなどどういう理由なのだろう。自身を優れた参謀であると確信していたサナルにとって敵の行動の理由が読めないというのは非常に腹立たしいことであった。  そして、その敵の行動がサナルにとっての致命傷になりうることをサナルは重々承知していた。 「サナル様、第4軍が北西方面への展開が終わったとのこと」 「よし、引き続き敵軍の情報をくれ」  予備戦力として保持していた第4軍を兵の薄い北西方面へ展開することによって逃げ道をふさぐ算段である。逃げ道をふさぐなど古典的ではあるが十分に有効な手段である。     
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