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サナルの顔がようやくいつもの引き締まった顔へと戻っていく。悪い報告ばかりではないのだ。サナルの子飼いであるユートからは魔法部隊の排除成功の報告もきているし、中央の戦場も敵は撤退せずに残っているため獣人の狩場となっている。
魔王軍の参謀として今のこの戦場に求められるのは敵の戦力を可能な限り減らすことだ。ゆえにサナルも敗残兵となった敵兵たちを落ち武者狩りのように狩っているのだ。
アセイム宿場街を超えた先、セントブルム砦には今回以上の戦力が控えている。テオニード獣軍全軍で戦ったとしても通常の方法では勝つことは難しいであろう。
まぁ、セントブルム攻略にはそれ専用の作戦が別にあるのでサナル自身あまり心配はしていないのだが、目につく戦力は減らしたいあるいは遠ざけたいという気持ちは大きい。特に今、中央へと向かっているハイレルト兵たちで構成された軍は遠ざけたいと思っている部類である。
「2~3小隊は出入り口で待機。あとは――」
サナルは指示を告げようとするが突然口をつぐんだ。しばらく何かを考えこんだあと、サナルは急に身支度を始める。
「護衛部隊は私についてこい。敵を逃がすわけにはいかぬ」
サナルの号令で30人ほどの戦士が付き従う。ようやくサナルの中で敵の狙いを読むことができたのだ。
「(かなりの無茶ぶり……間に合うか?)」
敵……すなわちハイレルトの敗残兵たちの狙い。サナルが行き着いた答えはセントブルム砦への帰還だ。
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