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このまま森へ逃げ込むならばサナルは見逃すつもりであった。もちろん、第6軍には追撃戦をしてもらい、当分再編できないほどにいたぶってからだが。敵にとってその状況はよくも悪くもないといったところだろう。
兵を散らせば森の中の狩人である獣人に追われることもなく時さえ待てば自国へ撤退するタイミングをつかめるであろう。しかし、それではセントブルム砦での戦場に間に合うはずがないし、サナルはハイレルトの指揮官だけは生死問わず必ず捕まえるつもりであった。後顧の憂いを絶っておきたいのだ。
その考えを逆手に取られた。どうやら、ハイレルトの指揮官は自身が生き残る選択をしたらしい。それならばわざわざ殿を残してまで中央へ向けて兵を走らせた理由を理解できる。
奴らは中央を横切ってセントブルム砦へ帰還するつもりだ。当然、道の途中に邪魔者がいるにはいるが、人間側の兵たちも大勢いる。精強な彼らが街へ侵入することができ、指揮の立て直しと電撃的な撤退ができれば魔王軍側にとって都合の悪い展開となる。
それに気づいたサナルはすぐさま自分の足で敵が通るであろう場所へと向かった。
しかし、時はすでに遅かった。
「やはり兵を捨て石にするのか!」
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