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アセイム宿場街の中心地よりやや外れた並木道。そこでは獣人の戦士たちとまとまった動きをする人間軍の兵たちが交戦していた。敵の数は100ほどに対し、少人数で攻めていた獣人は約20。サナルは引き連れた30を足せば負けることはない。だが、目の前にいる敵はただの殿。敵の本陣はすでにこの場所を突っ切った後である。
「急いで第4軍へ知らせろ、作戦変更だ。敵の指揮官を殺る。手加減は無用だ」
ガリッと爪を噛む。
第4軍は温存していた部隊であるが今回の作戦においての役目は”脅し”である。敵の撤退線にわざと配置して敵の撤退意思を削ぐのが目的である。もはや混戦と化したアセイム宿場街ではまとまった動きをする敵は少ない。
せいぜい後方からやってきた援軍か、未だに前線を維持しようと固執している一部の兵たちだけだ。そのため、損耗を避けたいサナルは第4軍をただの壁として利用したのだ。
通り抜ける敵は無視し、可能な限りその場を堅守することを目的とする。これでは敵の指揮官が脇を通り過ぎても命令通り見逃すであろう。
第4軍への伝達を終えたところでサナルは混戦の最中へ自らも飛び込む。参謀であるため、頭脳戦が得意と思われがちだがサナルも獣人の戦士である。一流の戦士には程遠いが人間の一般兵程度は相手にならない。
「ちぃ、なんだこの異常なまでの指揮の高さは……」
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