序章:コトの発端は…

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 ”勇者”がいないのは現在進行形である。ならば、見捨てるよりも共に戦う方が理に適っていたはずだ。俺の言葉にモルフは不敵な笑みを浮かべる。 「ええ、ですが今は元勇者候補のレオ殿がおりますから問題ないでしょう」  元勇者候補……その言葉が重く押しかかる。  俺は勇者ではなかった。勇者にはなりえなかった。そして、英雄にもなれなかった。祖国であるハイレルト王国が魔王軍によって蹂躙(じゅうりん)されていた時、俺は戦うことができなかったのだ。 「レオ殿の心中お察しします。あの無慈悲な魔王軍によって故郷の国を失ってしまい逸る気持ちもわかります」  ウンウンと勝手に頷くモルフ。 「しかし、安心してください。レオ殿のために一個兵団ご用意いたしました。どうぞご自由にお使いください」  一個兵団。シュベルツ王国騎士団では約100名ほどだ。元勇者候補の俺にはやや足りない兵力ではあるが自由に使える兵がいるだけでマシといったところだ。  モルフを攻めたい気持ちもあったが彼もアレスタル聖騎士団の言葉に従ったまでのことだろう。 そう言葉の矛を収めようとしたところ彼は不穏な言葉を放った。 「そういえば、先ほど偵察隊より報告がありまして……どうやら魔王軍の先鋒(せんぽう)がすでにこちらまできているようなのです」     
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