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報告では50体ほどと聞いているが精鋭の可能性が高い。そんな連中とまともにやり合えば一般兵レベルでは勝ち目は薄い。ゆえに俺はすぐにその場所へ駆けつけたが時はすでに遅かった。
「ぜ、全滅しているだと」
雨で周囲がぬかるんでいたが、それでも十分に間に合う速さだったはずだ。それなのに兵たちは全滅している。確認したところ兵たちの全ては刃物類で切り刻まれており、反撃した形跡はほとんどない。
「たしか、ハイレルトを陥落させたのは獣人軍だったよな」
トムがそう指摘する。獣人とは亜人と呼ばれる魔族の一種で人間に近い外見を持つ者だ。
鋭い爪を持ち、人間を翻弄するほどに速い種族も多くいる。
おそらく、ここの兵たちはそういうモノたちにやられたのだろう。
「くそ、この様子だと3班も敵にやられた可能性が高いな」
「ああ、10班はただはぐれただけだと思うが時間の問題だな」
「仕方ない、ここは撤退しよう。トムは周囲の警戒をロルク班長は兵たちをまとめてくれ」
「ああ、わかった」
「了解しました」
2人の返事を聞いて俺は張り詰めていた肩をそっとほぐした。雨の森での進軍に潜む魔王軍の精鋭たち。敵はただの偵察だと思って油断していた。それは俺のミスだ。許されるべきことではない。これではあいつ……ディルクへ俺の忠誠心を示すことなんてできっこない。
「どちらに撤退されるのですかな」
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