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雨の中、くぐもった声でそう聞こえた。
その刹那、目の前で兵たちをまとめていたロルクの脳天を矢が貫いた。それだけではない俺の足や周囲の兵たちにも矢が突き刺さった。
「っ」
すぐに剣を抜き、矢の持ち主がいるであろう場所へと顔を向ける。ロルクは断崖絶壁と言っていたがそれほど高いモノではなく十数メートルほどの断崖で中央には白い貴族衣が見えた。
「これはどういうことだモルフ騎士団長!」
モルフだ。横に広い断崖はモルフとその兵たちでいっぱいになっていた。矢は次々と飛来してきては俺の兵たちへと突き刺さる。ざっと百余りの弓兵が絶え間なく矢を番っては射る。
「ほっほっほっ、憐れですなレオ殿」
剣で迎え撃つが数が多いし、何より足に何本か刺さっている。致命傷ではないが満足に動くことが出来ない。
「お前は人間を……仲間を射るのかっ!?」
「何をおっしゃるのですかレオ殿? 賤民ごときがいくら死のうと我らシュベルツ王国騎士団には関係はないのですが」
「賤民だと?」
「ええ、あなたのような異教徒や国境近くの泥を啜って生きるような家畜どもが平民であるわけがないのですよ」
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