第6話 梟の隠密 中

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 この魔法道具店で売られているのは魔力(マジックパワー)を保存した魔石や構築式を作るための材料、精神領域(メモリー)を少しだけ増大する杖などのアイテムだ。  俺がこの店にやってきたのには理由がある。まぁ、ヒマだったからという理由もあるが、それとは別に明確な目的がある。  ハイレルトの中でも大きい店だが、面積は大体宿屋の個室2部屋分くらいしかなく、貴重な魔本は(うずたか)く積まれ、構築式の作製に必要な液体が詰まったフラスコやらなんらが乱雑に置かれていた。 「にしても久しぶりだなこの店」  他の客に聞かれないようにそう呟いた。この店は俺がかつて、ハイレルトにいた頃に何度か通った店だ。俺は黒いフードを被り口元はボロいうす灰色の布で(おお)っていた。頭のネコミミと顔を隠すためだ。  見るからに怪しい人物であるがこの店の中だけでいえばそうでもない。魔術を研究するような魔法使いは大抵、こんな恰好をするのだ。といっても彼らがこんな恰好をするのには魔法を効率的に行使するために必要だからであり、俺のように素性を隠すためではない。     
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