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第1話 元勇者候補、捕虜になる
ずっと夢を見ていた気がした。遠い過去の……故郷の夢を見ていた気がする。
ハイレルト王国首都より東側の山岳地帯。そこが俺の故郷だ。幼い頃に魔王軍によって奪われた故郷の記憶は少ない。覚えていることは街を見下ろすことの出来る大きな丘があったことと優しい家族に囲まれていたことくらいだ。
そのため、セピア色の夢に映る光景はいつも同じ内容だ。暖かな日差しに包まれた故郷の丘と家族たち。
俺にとって故郷とはもう戻ることのできない過去であり、二度と来ない未来だ。
■□ 神暦1342年 馬月3日 シュベルツ王国東無国籍地帯 □■
「……う」
ふいに漏れた音は自分でも信じられないくらい弱弱しい音だった。身体中がズキズキと痛み、俺は意識を取り戻した。
「ここは?」
うっすらと目を開けると天井には満点の星々。横からはパチパチという焚き木が燃える音と煙の匂い。俺の身体の上には薄い布がかけられていた。
たしか俺はモルフに嵌められて…。
「もう目が覚めたの?」
声がかけられる。焚き木の前にこげ茶色のフードを被った人が座っていた。
「――あんたが助けてくれたのか」
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