雨模様とあの子の心模様

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雨模様とあの子の心模様

 四月だと言うのに、雨が酷い春が続いていた。晴れやかな門出も、賑やかな花見も、ザアザアと降る多量の粒に押し流されて、皆げんなりとしていた。個人的に言えば、雨の日は大歓迎だが、それはあくまで個人の感想でしかない。  彼女に出会ったのは、そんな時だった。僕と名ばかりの登録者――友人数名、勿論数合わせのためだ――が所属する“B級映画鑑賞会”に、入学間もないピカピカの一年生がやってくるなんて露程も思っていなかった僕は、その日も持ち寄ったバター醤油味の徳用ポップコーンを摘まみながら、ソファに溶けるようにクソ映画――もとい、B級映画を堪能していた。二度のノックの後に現れたのは、それこそ映画の中から飛び出して来たのかと思わんばかりの、清らかな乙女であった。黒く大きな雨傘は無骨であったが、彼女が持てば何であれ映えるのか、違和感は感じなかった。セーラー服に機関銃、女子高生に日本刀が似合うのと、きっと理屈は似ているのだろう。雨垂れたようにしっとりとした長い黒髪と、花の装飾が誂えた黒いチュニック、黒無地のパンツ。喪にでも服しているのかと言わんばかりに黒ずくめであるが、似合っていない訳はなかった。     
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