雨の奇跡

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“雨” それは“天からの恵み”と言われたり、 湿気の原因として洗濯物が 乾きにくいと嫌われたり。 はたまた偏頭痛の種になったりと。 人それぞれ受け取り方は違うだろう。 「で?一体そこで何やってたの、雨宮君?」 とりあえず、私は目の前にいる見覚えがある 同級生、それも同じクラスであったはずの 彼に話しかける。 「さっきも言っただろ?空を見上げてたんだよ。 …とりあえずその危ないヤツを見る目はやめてくれ、神崎…だったよな?」 「あっ、覚えてくれてたんだ。 一応同じクラスだったはずだよね、私たち。」 「まだクラス替えして2ヶ月だろ?流石に全員の名前を覚えてるわけじゃないけど…」 そう言いながら彼は停留所の中に入り カバンから取り出したタオルで頭を拭き始める。 「まあ名前合ってて良かったよ、間違ってたら…」 「何言われるかわからないって?」 「ハハッ、まあ、『雨宮とかいう奴は同じクラスのやつの名前ひとつ覚えていないらしい。』なんて言われようものならいじめられかねないし。」 とは言うものの、彼も本気で言っているわけじゃないだろう。 私自身、基本的にあまり多人数で絡むこともないし、彼もまた、集団で目立って行動するような人物ではなかった気がする。 それに… 「わざわざ傘を持ってここまで濡れずに来たのに、 突然ずぶ濡れになりたがる方がよっぽどおかしいよね。」 「確かに。」 そうしていると しばらくして雨が弱まり、 どうやら帰りが同じ方向らしい彼と 2人で歩き出した。
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