あふれる

2/2
前へ
/2ページ
次へ
わたしは強いから 破けた空みたいに 雫をこぼしたりなんかしないの おおわれた鈍色の空 白みがかった止まれの標識 突き刺さる赤信号 ひび割れたアスファルト 水無月だというのに 無慈悲に時を裂くのは水 「無いのは月のほうかもね」 ふたたび見上げることはせずに つぶやいた 目深にさした傘 小さな世界を守る傘 目深にさした傘 わたしの世界を守る傘 おかしいな 冷たい雫ははねのけるのに 温もりある雫が わたしの足に滴り落ちた
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加