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そんな佐野の心とは別に、どこかから神上がアルファだと噂が回ってきて、佐野の周りはいっそう騒がしくなった。性別種が公になってしまい、佐野はヒヤリとした。本人が隠している場合もあるからだ。
けれど、いらぬ心配だったと気づいたのは、少し経ってからだった。
神上はそういうところは『クソ』がつくほど真面目なようで、浮いた話を聞いたことがない。証明するように、朝から夕方までバスケに明け暮れ、休日だって真面目に部活に出ている。
この年頃だから性欲はありまるくらいだし、言い寄られたらフラフラとついて行ってしまいそうだが、そういう雰囲気を一切感じない。
こいつは修道でも極めてるのか? と時々思う。
決まった相手がいないものだから、当然この騒ぎもとどまることがない。学年が違うというのに、同室のよしみでこんなにも騒がれるくらいだから、一学年のことを思うとさぞかしモテてーーいや、大変だろうなと察しがついた。
もっとも、この間まで中学生だった子たちには少々刺激が強いかもしれないが。
そんな同室の後輩が、先日部屋で『いたして』いた。
遭遇した当初は、おいおい冗談だろー……とげんなりすると同時にひどく驚いた。
神上はそういうことは興味がない人間だと思っていたから。さらに面と向かって牽制されたものだから、なおさらだった。
だから、行為をしていた相手がつがいなのだと悟らざるを得なかった。
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