1: 後輩のつがい

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 神上の家は、ファッション業界では名の知れた事業を営んでおり、メディアへの露出もある。おもしろ可笑しく記事にされ拡散される可能性もある。 「言ってない。ーー許可でいうなら、本人にも取れてないな」 「あー……、事故的なやつね……」  発情期のお兄さんに不遇にも接触してしまい、やってしまったのか、と想像がついた。  みたところ、華奢がすぎるというわけではなかったが、上背があって鍛えまくっているラット発症中のアルファから逃れるなんてできないだろう。  今の話から推測すると、神上はずっと好きだったけれど、お兄さんはとっては不運だった、というところだろうか。  神上は幼い頃から、お兄さんに焦がれていて、いえぬ思いを秘めていたに違いない。ずっと言わぬまま過ごすか、告白する時期を見計らっていたかはわからないが、突発的につがうつもりはなかったはずだ。  お兄さんはお兄さんで、神経質になっていただろうということは容易に想像できる。  アルファとオメガが家庭内にいる場合は、オメガがとても気を使うと聞いたことがあった。  なにそれ。お互い不憫すぎじゃん……とげんなりしていると、神上は意外そうな顔で、 「事故? まあ、本人はそう思ってるけど」  といった。  佐野は今聞こえた言葉を反芻した。  本人はそう思ってる?  どういうことだ。     
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